なぜ客観的記録が勤怠管理に必要なのか?その背景と実現方法とは
長時間労働による過労死や時間外労働の未払い問題などを解決すべく、働き方改革が推進される中、労働安全衛生法が改正されました。それにより、客観的な労働時間の把握が義務づけられ、企業はその対応が急務となりました。
しかし、客観的記録がなぜ必要となり、どんな対策を講じなければならないのでしょうか。
今回は、法改正前に比べ現在において求められる勤怠管理の現状と、企業が労働時間の客観的記録について実施すべき具体的な対応について詳しく解説します。
勤怠管理における客観的記録とは
2019年に労働安全衛生法が改正されたことにより、労働時間を適正に把握することが義務化されました。そのためには、客観的な労働時間の記録を把握する必要があります。
本章では、客観的記録とは具体的にはどのような記録なのか、厚生労働省が定めている客観的記録の定義も含めて詳しく解説します。
また、労働時間とは勤務時間における「どこからどこまでの時間なのか」が曖昧であるケースも散見されます。勤務中において、どの時間を記録すべきなのかについても解説します。
客観的記録とは
客観的記録とは、従業員から提出された勤務記録ではなく、客観的な要素が認められる勤務時間の記録を意味します。例えば、ICカードによるビルやフロアの入退館時刻や、業務用PCのアクセスログなどです。
厚生労働省では、「タイムカード、ICカード等の客観的な記録を基礎として確認し、記録すること」と定義しています。
出典: 厚生労働省|労働時間の適正な把握のために 使用者が講ずべき措置に関する基準
つまり客観的記録とは、従業員から提出された自己申告による勤務記録だけではなく、タイムカード、ICカードなどの「客観的な記録」を把握する必要があるとしています。
客観的な労働時間の記録は、原則として自己申告を認めていません。ただ、場合によっては自己申告制による勤怠管理をしなければならないケースもあります。
例えば、直行や直帰により、タイムカードやICカードで労働時間の客観的記録を行えない営業職などが該当します。
とはいえ、業務用のパソコンを支給していれば、社内システムへのログイン記録が残っていると判断されるため、営業職であれば必ずしもこの措置を適用できるとは限りません。
あくまでも、客観的な労働時間を記録する方法が、他にない場合の措置である点であることに理解が必要です。
そもそも労働時間の定義とは
厚生労働省では、労働時間とは事業者の指揮命令下に置かれた時間を指し、事業者の指示だけではなく、「黙示の指示」で従業員が仕事をする時間も労働時間に含まれるとされています。
「黙示の指示」とは、会社が労働するよう指示はしていないが、従業員が労働せざるを得ない状況のことを指しています。
また、以下のような時間も労働時間に含まれます。
・参加が義務づけられている研修などの時間
・制服へ着替える時間、オフィスの掃除や備品などを片付ける時間
・実際に業務はしていないが、指示があればすぐに対応するために待機している時間
適正な労働時間とは、これらの時間も含めなければなりません。
客観的記録が勤怠管理に必要となった背景
ここまで客観的記録の定義について触れてきました。それでは、勤怠管理においてなぜ客観的記録の把握が必要となったのでしょうか。
労働安全衛生法の改正により義務化された
2019年4月1日に施行された改正労働安全衛生法では、従業員の労働時間について「客観的記録」が義務化されました。このことから、企業の勤怠管理において、客観的記録を把握することが必要となったのです。
従来、従業員の労働時間を把握する方法は企業に委ねられていました。厚生労働省より、労働時間を把握する方法についてのガイドラインが提示されていましたが、法律には具体的な記載がありませんでした。
労働時間の把握方法に課題があった
労働安全衛生法の改正前、企業の労働時間の把握方法には課題がありました。従業員の労働時間を把握する方法が企業側へ委ねられており、その対応は企業によってバラツキがあったためです。
その上、労働者の勤務日数や出勤・退勤時刻を記載すべき出勤簿には具体的に何を記載しなければならないか、どんな基準に基づいて労働時間を把握すれば良いのかといった、法的根拠が曖昧であったことも問題でした。
これらを要因として、長時間労働による過労死や時間外労働の未払いが大きな社会的問題となり、労働時間の管理に関わる法整備が進められたのです。
労働時間の把握は時間外労働の計算だけでなく、従業員の健康管理の側面からも、法的に客観的記録の把握が義務づけられるようになりました。
客観的記録を可能とする勤怠管理方法とは
現在、市場で提供されている勤怠管理システムには、労働時間の客観的記録をうまく取り込めなかったり、可視化しづらい製品がまだ多くあります。これまでは、従業員による自己申告や作為的な労働時間の記録だけでも法的に問題が無かったからです。
法改正以降、従来の勤怠管理システムの導入だけなく、従業員の自己申告の労働時間と客観的な記録に差がないことを証明できる仕組みが必要となりました。
それでは、客観的記録を可能とするには、どのような方法があるのでしょうか。
客観性の高いタイムカード運用を行う
客観的記録を可能とする勤怠管理方法としてまず挙げられるのは、タイムカード等の打刻の客観性を高めることです。
打刻の客観性を高めることとは、例えば制服が貸与されている場合は「着替える時間」また「オフィスを掃除する時間」なども、労働時間として記録できるようにすることです。
ただし、打刻時間をそのまま勤務時間として記録してしまうだけでは、客観的な記録とはならないため注意が必要です。
ICカード等のログを採用する
ICカード等によるビルの入退館、またはフロアの入退室データを活用することで、客観性の高い労働時間を把握できます。
タイムカードによる記録では、前述した通り運用次第では作為性が排除できず、客観的な記録とならない可能性もあります。
しかし、ICカード等によるログは、従業員の建物への入退館、またはフロアへの入退室時間を記録しているため、比較的に客観性の高い勤務時間の記録と言う事ができます。
業務で利用するPCの操作ログを取得する
客観的な労働時間を把握するため、業務で利用するPCの操作ログを保存、集計して利用する方法があります。
ICカード等による入退室管理システムの導入は、工事等が発生し時間やコストがかかる点からすぐに導入できないケースもありますが、PC操作ログの活用であれば既存のPCをそのまま活用でき、1ユーザーあたり月額数百円程度で導入が可能です。
また既にテレワークが広く一般的となり、今後の様々な勤務環境やワークスタイルの変化を考えると、PC操作ログを客観的な記録として活用する方法がおすすめです。
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また1ユーザーから導入可能なので、ワークスタイルが多様化している現在において、それぞれの部門や職種の勤務環境に合わせてフレキシブルに活用する事が出来ます。
それにより、客観性が高い労働時間を把握する仕組みが無理なく、段階的に構築できます。
まとめ
2019年4月1日に施行された改正労働安全衛生法により、従業員の勤怠管理は客観的記録を把握することが義務化されました。それにより企業は、従業員の客観的な労働時間を把握できる仕組みを採用することが求められています。
勤怠管理における客観的な労働時間とは、従業員による自己申告の労働時間ではなく、ICカードを使ったビルへの入退館、またフロアへの入退室時刻などを指します。
また昨今では、業務で利用するPCの操作ログを保存、集計して客観的な労働時間も把握可能なクラウド勤怠管理サービスがあります。
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